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ブロゴスフィア!ブロゴスフィア!

知られざるかもしれない方向音痴の世界

会社から帰るときの駅の入り口(改札)を変えてみたところ,二日続けて反対方向の電車に間違って乗ってしまいました.

なぜこういうことが起きるかというと,私の認識では「ホームに下りて右側の乗り場に入ってくる電車が,家に向かうそれである」ということになっており,元々電車の先頭側の入り口から入っていたのを後尾側の入り口に変えたことにより,「右側の乗り場」に入ってくる電車が逆方向のものになってしまったからであります.

(言ってる意味分かりますよね?)

 

あと,何ヶ月か前にオフィスがフリーアドレス制になったのですが,会議室が探せません.

オフィスの間取りを雑に表すと"回"になっており,内側の"口"の中にエレベータホールやトイレなどがあり,その周囲に会議室が並んでいるのですが,座席が自由だと起点が定まらずによく分からないので,

・最寄りの会議室の番号を確認する

・右に行くとインクリメント,左に行くとデクリメントの基本法則があるので,それに従ってフロアを回る

という感じで,「壁に右手をついてひたすら歩けば迷路を脱出できる」式のやり方で乗り切っています

(例外もありますが今のところ無策です).

 

などと供述しており.

「右も左も分からない」という慣用句がありますが,方向音痴パーソンにとってはむしろ「右と左しか分からない」が正解だということです.

本当に右も左も分からなかったらもはやそれは人間ではなく,クラゲとかミドリムシの知覚世界じゃないかと思います(※).それはそれで楽しそうな気もしますが.

地図アプリとかも,しばらく歩いてみないと自分がどっちに向かってるか分からないので,ARと言わず首筋にチップ埋め込む方式でもいいから絶対的な方向感覚を得たいものです.

 

しかしながら,方向音痴にもいいことはあります(良かった探しして終わりたいです).

それは「角度が変わる度に世界を新鮮に捉えられる」ことです.

本邦に於ける近代詩の父であり,マンドリン奏者としても知られる萩原朔太郎の掌編「猫町」は,「三半規管の喪失」により,普段とは反対の方向から訪れた町に「第四次元の別の宇宙」を垣間見てしまうお話しですが,これは正に方向音痴パーソンにしか書き得ない境地だと思います.

方向感覚のなさを幻想的な散文へと昇華させた偉大な成果物であり,全方向音痴パーソンに希望を与えてくれる名作.

青空文庫でも読めますので是非読んでみてください.

萩原朔太郎 猫町 散文詩風な小説

 

猫町 他十七篇 (岩波文庫)

猫町 他十七篇 (岩波文庫)

 

 

※この本に出てきます.

さまざまな生物の知覚により形成される"環世界"について書かれていて,めちゃくちゃ面白いです.

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)