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人文知が大事だなぁと思った話

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「カリフォルニアン・イデオロギー」の延長線上に、オンラインを過信した「コロナ・イデオロギー」がある、との見解はマジで傾聴に値すると思う。
zoomで繋がった、仕事が飲み会が出来た、の裏で置き去りにされているものがあり、
集会の自由などの、人間社会にとって本当に大切なものを思考停止して手放してしまっているのではないか。
私はインターネットやデータの可能性を信じているが、現在地としては未だ「粗にして野」なものであると捉えている。
のみならず、これまでは、「時短」や「携帯性」みたいなものが「便利」として優先される余りに、身体性や体験の質が蔑ろにされて来た、どころか、人間側がインスタント化した体験の方に期待値を合わせて更にそれの増産を求めるような、謂わば「負の強化ループ」のようなものすら発生してきた(今もしている)のではないかと見てもいる
(卑近な例として:スマホで動画を見ることと映画館で映画を観ること。圧縮音源)。
素朴な進歩主義を改め、歴史に謙虚に学び、人間らしさの定義をアップデートするためにも、テクノロジーと人文知の融合がガチで必要・益々重要なのではと考える今日この頃。
 
補足:
科学というものを、確立された手順に従ってクイズの正解パネルをめくるように真実が明らかになっていく、線型に進歩するものだとイメージしがちかもしれないが、野家啓一「科学哲学への招待」(ちくま学芸文庫)を読むと認識が改まって良いのでオススメ。例えば天動説なども、けして荒唐無稽なトンデモ学説だったわけではなく、パラダイムの枠内では、それなり以上に、観察によって緻密に理論立てられたものだったことがわかる。
科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)

科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)

  • 作者:野家 啓一
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 

 

 
 
 

デジタル文学館「中島敦の南洋群島」

山月記』で知られる夭折の天才作家、中島敦が、喘息の療養も兼ねて南洋パラオに赴任していた時期の資料を構成したフォトムービーを、神奈川近代文学館が公開している。
 
息子たちに宛てた絵葉書の文面がとても素朴に愛らしく、氏の作品の格調高い漢文調とのギャップに萌えること頻り。
この時の経験が、『ジーキル博士とハイド氏』『宝島』の作者、ロバート・ルイス・スティーヴンスンの南洋サモアでの晩年を描いた不思議な傑作『光と風と夢』に─ある意味で否応なしに─繋がっているのであろう。
最近再読したマルセル シュウォッブ(極北のような幻想小悦を書いた、私の最も敬愛するフランスの作家)の『少年十字軍』(海外ライブラリー)の訳者あとがきにも、該作家に絡めて中島敦とスティーブンスンのことが触れられてあった。
曰く、「わが国でも、喘息を病んで天折した中島敦は『光と風と夢』という美しい作品をスティーヴンスンに捧げているが、奔放で永遠に若々しい『宝島』の作者は、シュウォッブとか中島敦のような、虚弱で多感な肉体と博識で端正な精神の持主にとって無上の魅力をそなえているらしい。」
ストーリーテリングにステータスを全振りして、ドライブ感のある滅法面白い話を書いたスティーブンスンのような作家に、繊細・緻密で、時に衒学的な作風の中島やシュウォッブがそろって魅力を感じた、というのはとても興味深い話だと思う。
 
また、中島の傑作のひとつ『文字禍』が、最近刊行された『芥川賞候補傑作選』に収録されている。
この作品は文字と歴史を巡る極めて衒学的かつ幻想的な短編で、例えば「ボルヘスが書いた」と言われても信じてしまいそうな程、洋の東西も時代も超えた恐るべき傑作だと思う(全人類に読んでもらいたい)。
(『文字禍』は講談社文芸文庫の『斗南先生・南島譚』 でも読める。『芥川賞候補傑作選』は埴原一亟の短編目当てで買って積んである)。
 
斗南先生・南島譚 (講談社文芸文庫)

斗南先生・南島譚 (講談社文芸文庫)

 

  

光と風と夢・わが西遊記 (講談社文芸文庫)

光と風と夢・わが西遊記 (講談社文芸文庫)

  • 作者:中島 敦
  • 発売日: 1992/12/03
  • メディア: 文庫
 

 

 

中国SFのススメ

先週末に、徒歩圏内(30分)の書店が営業を再開したため、久しぶりにリアル書店で本を買ってきました(ちなみに本自体はオンラインや電子書籍でそこそこ以上に買っています。しかし店舗に行きたい欲求があります)。

 マンディアルグ『すべては消えゆく』(祝古典新訳文庫入り!)など四冊を購めた中で、”中国のウィリアム・ギブスン”と評される作家、陳楸帆(チェン チウファン)の長編『荒潮』が特に楽しみです。

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

 

気付けば今年に入ってからボチボチ中国SFを読んでいるので、この機会におススメしたいと思います。

ケン・リュウ『紙の動物園』 

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者:ケン・リュウ
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 米国在住の中国人作家の手になる短編集。
ストーリーテリングは抜群に上手いですが、表題作を筆頭に、全編細やかな人情味のある話しで、自分はSFにはオルタナティヴ(beyond 人間)な人間性を求めがちなので、少し甘過ぎると思ったりもしました(好みの問題)。
集中「もののあはれ」は、日本の漫画「ヨコハマ買い出し紀行」に触発されて書かれたものだそうです。

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー

 
ケン・リュウは自身が優れた作家であるのみならず、中国SFの英訳者、エヴァンジェリストとしての活躍も目覚ましく、彼の手になるこのアンソロジーは中国SFのショウケースとしてとても素敵な一冊に仕上がっていると思います。
先に挙げた陳楸帆の手になる、バイオネズミ駆除のために招集されたモラトリアム青年兵団の苦闘を描いた『鼠年』、三層に折りたたまれる都市、ネオ北京─ギミックの中に社会の構造そのものを託したと見ることもできるであろう─での階級闘争的な冒険を描いた、郝景芳(ハオ・ジンファン)の表題作が出色の出来で、他に後述の劉慈欣(リウ・ツーシン)『三体』の一部を短編として抜粋した『円』も収められています。

劉慈欣(リウ・ツーシン)『三体』
 

三体

三体

 

 


目下の最注目作。
文化大革命の悲劇を起点に、謎のVRゲーム(ゲームとしての面白さはよく分からないが超キャッチーな世界観のそれ)、異星人とのファーストコンタクトへと、魅力的なギミックを織り交ぜながらインフレしていく物語が最高に楽しい。
しかしこれはまだ三部作の序章に過ぎないとのことで、近日刊行の2作目が待たれます。

ある意味でリアルなサイバーパンク国家とも言えるテクノロジー全盛の中国の現実の元で、しかしフィクションに託して語られているのは寧ろヒューマニズムの在り方ではないか、みたいなアクチュアルな読み方もできそうですが、そういうのは抜きにしてまずはハイクオリティ且つ最新のサイエンスフィクションとして楽しむのが良いかと思います。

番外:ケン・リュウの推薦と、アジアンテイスト繋がりで。

フォンダ リー『翡翠城市』 

 翡翠を身に着けることで身体能力を拡張する術を身に着けた〈グリーンボーン〉と呼ばれる人々の住む島国、ケコン島を舞台に、島を統治する二つのファミリーの果てなき抗争を描く"SFアジアン・ノワール"。ゴッドファーザー的な仁義なき戦いに能力バトルをプラスした、エンタテインメントとして申し分なく楽しめる作品です。
これも連作の序章とのことで、続刊が鶴首して待たれます。
この本は装丁がとても良くてジャケ買いしてしまいました。

 

 

ソウル本屋さん紀行(後半)

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前半の続きです。

 

 THANKS BOOKS

弘大(ホンデ)エリアからちょっと外れた合井(ハプチョン)にある素敵セレクト書店。

採光のよいオシャレな店内にオシャレな本がたくさんあって最高です。

 

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お店の外観

カンバンの「Thanks YOU for begin YOU」良いですね。

 

Access:地下鉄6号線合井(ハプチョン、Hapjeong)駅 5番出口 徒歩5分 (Seoul Station から30分目安)

地図:

 

永豊文庫(YP Books) COEX MALL店

江南(カンナム)エリアの三成(サムソン)にある「Coex(コエックス)」という巨大ショッピングモール内のYP Booksです。中型の店舗。

K-POPの重要メジャーレーベル、SM TOWNの巨大液晶ビジョンが見ものです。

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SMTOWN@coexartium

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お店の入り口

 

Access:地下鉄2号線 Samseong (World Trade Center Seoul) 駅徒歩7分 (Seoul Stationから50分目安)

地図:

 

おまけ:その他のブックスポット

梨泰院エリア、緑莎坪駅から経理団通りに向かう途中にあった古本屋さん。
在韓米軍の駐留地に近い故か、英語の本が多かったです。
「Take Care of Yourself」、本を読むってそういことですよね(或いは買うのも積むのも!)

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お店の外観

 

観光名所的な界隈、仁寺洞(インサドン)にあった古書店

歴史あるお店だそうですが朝早かったためか残念ながら空いてなさそうでした。

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お店の外観

観光名所、景福宮に向かう歩行者天国に開かれていた、青空古本屋さん。絵本など売られていました(景福宮の近くまでバスで行こうとしたら「休日だから」と途中で降ろされたのでしたがおかげで出会えました)。

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青空古本屋さん

以上です。ソウル初めてだったのであちこちウロウロ見て回るついでに大型店中心に回った感じでした。

ぜひまた行きたいなーと思っています。

あと文字読めなくても本屋に行くのは楽しいので臆せずどんどん行くのがよいと思います。

 

ソウル本屋さん紀行(前半)

2019年の5月末から6月の頭にかけて、韓国はソウルを訪れる機会があり、その際に立ち寄った書店をご紹介したいと思います。

#どこに旅行しても本屋さんに行かずにいられない病気なもので。あと旅行3日目ぐらいになると現地の食事を一休みしてケバブ屋に行きたくなりますよねなりませんか?

 

はじめに ー 移動の心得

ソウルは大都会ですので地下鉄とバスに乗れれば本屋さんに行くのには困りません(まぁタクシーで回ってもいいのですが行動に不釣り合いな感じしませんか?)。

現地に着いたらまずはT-moneyカードを入手しましょう。

Suicaのような交通ICカードです。

T-money:韓国交通カードの購入と使い方

空港のコンビニで買うのが手っ取り早いかと思います。

 

地下鉄

T-moneyカードさえ持っていれば、改札でタッチするだけなので、日本の地下鉄と変わりないです。カードの残額は駅でチャージできますし、チャージ機は日本語・英語に切り替えも可能です。駅名表記やアナウンスは英語もありますので全般そんなに困らないかと思います。

ソウルの地下鉄 | 韓国の交通|韓国旅行「コネスト」

バス

前乗りで後ろから降車。乗る際に運転席そばの端末にT-moneyカードをタッチします。

鉄道に乗り換える場合は、降りる際にも後部ドアの端末にタッチします。バス→鉄道の乗り換え割引があるためで、降りるとき常にタッチしてても問題ないですたぶん。

乗る際の注意事項としては、日本よりは乗りますアピールちゃんとした方がよさそうなのと、停留所にバスが複数台いると離れて止まってそこで乗り降りさせたりするので、番号とかよく見て目当てのバスを見逃さないぞという気持ちを強く持っておいた方がよいです。

降りる際は、ブザーを押すのは日本と同じですが、ハングル/韓国語が分からないと停留所名で判断するのがちょっと厳しいので、Googleマップで現在地を確認して、一つ前の停留所を出たら押す、みたいな感じで自分は乗っていました。

あと、ソウルのバスは専用レーンを走るのでけっこう飛ばします。

 

乗換案内とかは、自分はGoogleMapで経路調べるので大体いけてました。本当はNaverのアプリとか入れるのが良いかもです。

ソウルの市内バス | 韓国の交通|韓国旅行「コネスト」

 

では本屋に参りましょう。

#何となくのガイドとして、ソウル駅(Seoul Station)からの目安時間を書きましたがGoogleMapの経路を適当にピックアップしただけで実測値ではありませんのでご留意ください。

ARC N BOOK

セレクトショップというかテーマパークのような複合型書店。

書籍以外に雑貨なども多く扱っているほか、カフェやレストランも入居していて、半日とかのんびり過ごすのもありかも。

本のアーチ型トンネルを見るだけでも行く価値はあります。

ソウル駅や明洞からも近いので、観光の合間に寄るのにも適しているかと思います。

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入口

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本のトンネル!

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カフェから見た本のトンネル

 Access:2号線 乙支路入口駅 1-1番出口から徒歩2分 (Seoul Station から15分目安)

地図:

ARC.N.BOOK 아크앤북 (@arc.n.book_official) • Instagram photos and videos

 

 教保文庫(KYOBO Bookstore)(光化門店)

ソウル随一の大型書店。かなり広い1フロアに、充実した書籍売り場と、雑貨や文具、家電などのお店が詰まっています。CD屋さんも入っていました。

ガチで本を探すならココじゃないでしょうか。

入口のシャンデリアが豪華で必見です。

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閉まっているときの入り口

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入り口のシャンデリア

Access:地下鉄5号線光化門駅直結 (Seoul Station から20分目安)

地図:

 

永豊文庫(Youngpoong Bookstore/YP Books) 鐘閣 鍾路本店

教保文庫と並ぶ書店チェーンの本店です。

オーソドックスな大型書店という印象。雑貨や文具も充実していました。

同じビルに無印良品なんかも入っています。

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入口

Access:地下鉄1号線鐘閣(Jonggak)駅 5・6番出口 直結

地図:

ちなみに明洞のNOON SQUAREという商業ビル内にもYP Booksの店舗があるとの情報をキャッチして行ってみたのですが、すでに閉店したらしくフロアはもぬけの殻になっておりました。。

 

BOOK PARK

梨泰院エリアの漢江鎮・BlueSquare内にある超絶ステキ書店。

吹き抜けの巨大書棚も壮観ですし、内装もオシャレで可愛い。

色んな所に座って本を読むスペースが設けられている他、カフェやテラス席もあって、一度長居してみたいなーと思わずにいられない場所でした。

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入口

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吹き抜け巨大本棚

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吹き抜け巨大本棚(2)

Access: 地下鉄6号線漢江鎮駅直結 (Seoul Stationから30分目安)

地図:

 

長くなってきたので後半に続きます。

 

おまけ:

梨泰院エリアで見つけたバクラヴァ(Baklava:トルコ伝統のお菓子)のお店と、可愛いかったのでつい買ってしまった詰め合わせ。持ち歩いたので中身が寄ってしまっています。。シロップ漬けになっていて甘くて美味しかったです。

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バクラヴァ屋さん

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バクラヴァ詰め合わせ

 

【書評というほどでもない感想】ホルヘ・ルイス・ボルヘス「夢の本」 (堀内研二 訳)

 

 

創作にあっては宇宙的短編「バベルの図書館」を物し、現実においてもアルゼンチン国立図書館の館長を務めた、紛れもない”書物の王”であり、更には「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」 において『あらゆる作品が非時間で無名の唯一の作者の作品である』との極点的な─或いは単に真実かもしれぬ─文学観を述べたボルヘス、その人が稀代のアンソロジストであることは、必然すぎる程の必然だと言わねばなるまい。
ましてや彼の仕事の主要なテーマの一つである「夢」のアンソロジーとあっては…、
古今東西の夢に纏わる─或いは夢そのものの─テキストの織り成す夢幻かつ無限の夢のタペストリ、夢の中で更に夢を見、それから覚めたと思えばまたそれも夢、と、正に”夢中の時間”を約束された一冊である。

 

取り分け、「コールリッジの夢」。
フビライ汗は夢で見た幻を基に宮殿を建て、数百年の歳月が流れた後に、英国の詩人が夢にフビライの宮殿を見て詩を書く。
このことは『不滅もしくは長命なるものの意図』による、時を跨いだ一続きの計画であり、夢も仕事もまだ終わってはいないのだと…
マルコ・ポーロフビライ汗に夢幻の如き幾つもの都市を語り聞かせる、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」は、或いはこの夢の系譜に連なるものでもあろうか。
(更に、ハンガリーポストモダン作家 エステルハージ・ペーテルは、「見えない都市」をパロディ化した同名の短編(「黄金のブダペスト」所収)を著しており、夢のリンクは繋がっていく)。

 

今一つ印象的なのは、グルーサック「夢うつつ」とパピーニ「病める騎士の最後の訪問」において、何れもシェイクスピアテンペスト」(「あらし」の邦題もある)の主人公であるプロスペローの台詞『我々は我々の夢と同じ布地でつくられている』が引用されていることで、この言葉はボルヘス晩年の講義録「七つの夜」の「悪夢」の回でボルヘス自身も言及しており、何か、夢と人生を考える上での結節点のようなことばなのだと改めて思った。
更に余談だが、私自身もこの言葉に憑りつかれ気味なのか、「テンペスト」は沙翁劇の中でも特に気になる作品で、新潮文庫(福田 恆存)とちくま文庫(松岡 和子)と白水Uブックス(小田島雄志)の3つの翻訳を読んだことがある。
『夢と同じXX』のXXの部分は、”材木”だったり”布”だったり”糸”だったりするが、原文は"We are such stuff as dreams are made on"らしいので、どれが正解ということはなさそうである。

 

最後に、ここまでダラダラと取り留めもないことを書いてきたことへのエクスキューズとして、ボルヘスは書物至上主義であったと同時に、読者の役割にも重きを置いていたことを述べておきたい。
それは講義録「語るボルヘス」の「書物」の回において、『書物は読者によってより豊かにされてきたのです』という表現で直接に示されているし、同書中の「探偵小説」では、文学的なジャンルというものは存在せず、探偵小説の読者が生まれたときに初めて探偵小説というジャンルが生まれたのである、と語った後で『読者が一冊の本をひもといた瞬間に、本が誕生するのです。』とまで言い切っている。
短編「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」において、”セルバンテスの原典と完全に同一のテキスト”としてリライトされた”ピエール・メナールの『ドン・キホーテ』”を鮮やかに比較註解してみせたことにも、批評家=読者の果たし得る恐るべき役割と力が示されていると考えられるだろう。

 

無限の夢のアンソロジーはまた、無限の読みの可能性に開かれているのだ。

【中級者向け】【ちょこっと作例付き】Kindleで買える折り紙の本_一枚折り編

はじめに

気が付けば Kindle で買える折り紙の本(折り図集)がけっこう増えてるなー、と思ったので、私のおススメをご紹介します。

折り図集を手軽に何冊も持ち歩けるのかなり素敵です。海外の本を一瞬でしかも安く買えるのも最高。

 

折り紙のカテゴリには、大まかに分けて、一枚の紙で折る「一枚折り」と、複数の紙を組み合わせてオブジェや箱を作る「ユニット折り紙」がありますが、この記事では一枚折りの本を取り上げています。ユニット折り紙編も気が向いたらやるかもしれません。

 

現代の折り紙

「折り紙といえば折り鶴とか手裏剣でしょ」みたいな認識の方もいらっしゃるかと思いますが、現代の折り紙はそれらのトラディショナルな技法や造形から遥かに進歩した、途轍もない境地に達しています。

 

百聞は一見に如かず、2016年に台湾は台南の奇美博物館(Chimei Museum)で開催された「Origami Universe」展の様子をご覧ください。

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photos.google.com

当然ながら、展示されているのはかなりエッジーなレベルのものです。

本稿では中級(=ややコンプレックス)かつ定番的なものをご紹介します。単純に自分がその辺のレベルだからです。

 

 おススメ折り図集

折り紙夢WORLD 花と動物編

折り紙夢WORLD 花と動物編

 

数学者でもある”折り紙博士”こと川崎敏和氏の代表作、「川崎ローズ」。折り紙史上の重要なイノベーション

ねじり折り+斜めグリッドからの自然な曲線を持った仕上がりがまさにマジカルで、折る過程にとても楽しみがあります。

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他に川崎氏の著作

折り紙夢WORLD

折り紙夢WORLD

 

 

博士の折り紙夢BOOK

博士の折り紙夢BOOK

 

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Origami Sculptures (English Edition)

Origami Sculptures (English Edition)

 

 Weevil

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ジョン・モントロール 氏はアメリカの巨匠。

写実的でありながらどことなくユーモラスで温かみのある動物の造形に特色があります。

 

他にも恐竜や動物の折り図が出ています。

Prehistoric Origami: Dinosaurs and Other Creatures (English Edition)

Prehistoric Origami: Dinosaurs and Other Creatures (English Edition)

 

 

African Animals in Origami (English Edition)

African Animals in Origami (English Edition)

 

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Origami Insects (Dover Origami Papercraft) (English Edition)

Origami Insects (Dover Origami Papercraft) (English Edition)

 

 Orb Weaver

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同じくアメリカの巨匠ロバート・J・ラング氏。物理学者でもあります。

 



 ラング氏の他の著作。バイオリニストとかCoolです。

 

ラング氏とモントロール氏の共著

Origami Sea Life (English Edition)

Origami Sea Life (English Edition)

 

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Hsi Min Tai's Origami Animals (English Edition)

Hsi Min Tai's Origami Animals (English Edition)

 

 猪(Pig) ※表紙の出来上がりとぜんぜんちがうな…

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戴錫民 Hsi Min Tai 氏は台湾の折り紙作家。

イイ感じにデフォルメされていて可愛いです。 

 

マスクの折り図集もユニーク

 

以上です。いい時代になりました。

個人的には、永遠のバイブルであるビバ!おりがみシリーズ、
「ビバ!おりがみ」「トップおりがみ」「おりがみ新世紀」「おりがみ新世界」
の電子化を熱望しています。

あとは前川淳氏の「本格折り紙」も。