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紀州の秋刀魚,その他

日付が変わってしまったが,私が敬愛して止まない郷里の作家,中上健次の誕生日に寄せて,数年前にTwitterで呟いた話しを再編集したものを.

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中上健次の初期のエッセイ集「鳥のように獣のように」に書かれている,秋刀魚の姿鮨の話が好きだ.

紀州(勝浦)で取れる秋刀魚は,黒潮に揉まれて脂が落ちてしまっているが,は,この脂の落ちた秋刀魚でなければ身がバラバラになってしまいうまく作れない,というお話.


『~紀州に来た秋刀魚が、やせほそり身も皮も固くなっていることは、妙に切ない。それは、平地がほとんどなく、山と海に閉ざされ、貧しさを生きた紀州そのものを、想わせる。』


郷土の味を想うときに,ある種の貧しさもまた,深みを沿える調味料となり得る,のではないだろうか.

 

鳥のように獣のように (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

鳥のように獣のように (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

 

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補記として,和歌山の地元料理には,貧しさを調味料としたものがイカにも多いということを示しておきたい.

  • 茶がゆ:地元では「おかいさん」と呼ばれ,専用のティーバッグが売られているほどポピュラーな,県民のソウルフード.米は少なく水気が異常に多く,県内の米作の貧弱さをレペゼンしている.夏場は冷やして食べたりご飯にかけたりもする.
  • ほねく:太刀魚の身を骨ごと使ったカルシウム豊富な練り物.子供の頃の給食にも出てきたが,食感がジャリジャリしておりあまり好きではなかった.
  • てんかけラーメン:醤油ラーメンに天カスとわかめ,紅ショウガ(のみ)をトッピング.ロハス.これは人に薦められる旨さ.