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【来なかった未来】FUTURO~夢のUFO住宅

 誰しも、辛いときや心が折れたときに見るDVDを持っているものだと思いますが、私にとってのそれを紹介致します。

FUTURO ?北欧・謎のUFO住宅を追え? [DVD]

FUTURO ?北欧・謎のUFO住宅を追え? [DVD]

 

FUTURO(フトゥロ)とは、フィンランドの建築家、マッティ・スーロネンにより1968年に設計された、プラスティック製のUFO型レジャーハウスです。

スペースエイジのマストアイテムとして期待されましたが、ヴェトナム戦争オイルショックの影響で、数十軒生産されたのみで立ち消えになってしまいました。

DVDは、このFUTUROの謎を追いかけたドキュメンタリで、30分弱の短いものですが、十二分に濃密な時間─失われたスペースエイジの夢─を味わうことができます。

 

DVDの見どころ

FUTUROのルックス、内装

  当然これが見どころでして、UFOの前面が開いて階段が引き出せるところとか、スペースシップ的な折り畳みベッドとか、とにかくスペイシーであまりにも最高です。

  とあるオーナーのインタビューに曰く「子宮の中にいるような夢見ごこち」とのこと。

百貨店の宣伝

  販促ミスったという話があり、百貨店に展示したはいいけどこんな特殊な住宅を百貨店で買う人いるはずなかったよねと、当時の営業担当者が語っています。

  フィンランドでは有名な百貨店STOCKMANNの、おそらくCFが収録されていて、FUTUROからモデルが駆け出してくるナイスな演出のものです。

  

軽井沢で神主が地鎮祭?的なことをやっている場面

  日本にも上陸。台風と地震に耐えられるかを、横浜大学に依頼して調査してもらい、OKだったそうです。

デュッセルドルフFUTUROアンディ・ウォーホル

   アートディレクター、チャールズ・ウィルプが所有していたFUTUROアンディ・ウォーホルが訪れた際の写真が紹介されています。ウォーホルは気に入ったのでしょうか。

サントラが素敵

  未来的に不穏なシンセ音楽が最高です。

  フィンランドのエクスぺリメンタルロックバンド、Circleのサブプロジェクト、エクトロヴェルドが手掛けているもので、サントラ盤も出ています。

www.discogs.com

在アジアのFUTURO

実物を見たいと思いながら果たせずにいます。

 

群馬の専門学校に一機が現存するようでして、学校を見学すれば見られるようです。

www.felica.ac.jp

 

 台湾の翡翠湾に幾つもあるようです。丸いのがすべてFUTUROのようで、現地で見るとかなり壮観のなのではと想像。

 

Google マップ

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関連書籍

古書価で凄い値段がついていますがこの本も持っています。

写真豊富でおススメです

(フィンランドで買ったやつなのでこのリンク先の英語版とはまた違う版かもしれません)。

Futuro: Tomorrow's House from Yesterday

Futuro: Tomorrow's House from Yesterday

 

 

日本だと中銀カプセルタワーがありますね。

スペースエイジ系だとVerner PANTONのPhantasy Landscapeなんかも好きなのでそのうち紹介したいです。

【京成線古本ツアー】京成中山~押上の間にある古書店まとめ

数年前から葛飾は柴又に住んでいます。

これまで伺った京成沿線の古本屋を、千葉方面から押上まで、順番に紹介してみたいと思います。

ヒキのためにツアーと銘打っていますが、一日で全部回れるかは知りません。

それぞれのお店の雰囲気を掴んでもらうため、というより主に自己顕示欲を満たすために、私がそのお店で過去に買ったことのある本も挙げてみました。

尚、私は古書マニアなどといったものではなく、殆ど安い本しか買わない、極めてヌルい古本好きですので、お店についても特にこれと言ったPOVを持っておりません。あしからず。

 

京成中山smokebooks

スタートは京成中山です。千葉駅に稲尾書房というベリィナイスな古書店があったのですが、昨年閉店してしまいました。船橋あたりは探索が足りていないのかあまりお店を知りません。

京成中山の駅は、改札を出るとすぐ中山法華経寺の参道になっており、地味に風情があります。東山魁夷記念館も近くにあったりします。

smokebooks は、参道を横切り風情のない大通りを暫く歩いた道沿いにある、こじんまりと小洒落たお店。カフェの街として話題沸騰中の清澄白河にも店舗があります。絵本やロハス的な本が充実しているイメージです。

 

<買った本>

パトリック・モディアノ「廃墟に咲く花」

フィルポッツ「闇からの声」

 

京成八幡山本書店

JR、都営新宿線本八幡と乗換え可能な交通の要所です。

山本書店は、駅前すぐの好立地にあって、風景にしっかり溶け込んだ、これぞ古本屋な一軒。路面の棚だけでもかなりの充実度です。

 

<買った本>

A.P.ド.マンディアルグ「オートバイ

J.D.カー「曲つた蝶番」

 

市川真間:

市川、市川大野、市川塩浜、市川真間、とある、所謂市川四天王の一つ。

実は古本屋充実地帯です。

智新堂書店

線路沿い、駅からすぐ。永井荷風著『断腸亭日乗』に掲載だそうで、質実剛健な由緒ある古本屋です。

 

<買った本>

三島由紀夫「女神」

ネルヴァル「火の娘」

春花堂

駅からすぐの雑居ビルの一階にある、フリースペースも併設のお店。

戦前、戦後の日本文学が充実している印象で、丹羽文雄など多数ありました。

大体の本に手書きの帯が巻かれてあり、独特のフォントが魅力的です。

 

<買った本>

ブレイク抒情詩抄

三浦哲郎「わくらば」

 

同地には他にも「即興堂」、「アトリエ*ローゼンホルツ」というお店もあるようでして、そのうち訪れねばと思っております。

 

京成小岩:BOOKばざーる小岩店

JR小岩とは1kmほど離れており乗換えには遠すぎます.

BOOKばざーるは駅から5分程のところにあるどちらかというと新古書店的なお店で、CDなんかも置いてあります。

 

<買った本>

舟橋聖一「悉皆屋康吉」

アゴタ・クリストフ悪童日記

 

青砥:竹内書店

コンサートホール、かつしかシンフォニーヒルズの所在地として一部では知られた街。

高架下のユアエルムには沿線ではそこそこ大きい部類に入る新刊書店、教文堂があります。竹内書店は、そのユアエルムを抜けてしばらくいったところに徐にあるお店です。

こじんまりと綺麗に整理された棚に、渋い品揃えが光ります。

 

<買った本>

山口椿「闇の博物誌」

 

ここで京成線は、上野に向かう京成本線と、押上に向かう押上線に分岐します。

本稿では押上線を上って行きます。

 

立石:岡島書店

のんべえの聖地として絶大な人気を誇る街、立石。

岡島書店は駅から10分弱歩いたところにある古書店で、「古書誠実買入」の看板が渋くて素敵です。

地元葛飾関連の本が充実している印象。

 

<買った本>

マンリー P.ホール「カバラと薔薇十字団」

丸田祥三「鉄道廃墟」

 

京成曳舟古書肆 右左見堂

 駅からは少々歩くのですが、お店のある、鳩の街商店街自体が激シブで散策にオススメです。

右左見堂は、2015年にオープンしたばかり、棚も日々成長している感じの楽しさあふれるお店で、戦争や革命関連の書籍も揃えつつ、絶妙にサブカルチュラルな感じが最高だと思います。

 

 <買った本>

ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック

マンスフィールド「子供的」

 

 京成押上:業平駅前書店

スカイツリーと、その周辺施設である東京ソラマチはいつも多くの人で賑わっていますが、そこから外れた押上の町自体はそうでもありません。昔からある商店街など、下町の魅力を感じられると思うのですがちょっぴり残念です。

業平駅前書店は東武スカイツリー駅から近く、京成押上からは少し歩きます。

店の中に段差があることにも象徴されている?ように、品揃えがとにかくカオス。

周辺のモダナイゼーションに負けずにこれからもがんばってほしいお店です。

 

<買った本>

林二九太「ユーモア小説 曇り晴れ」

 

捕捉1:

青砥で、押上線ではなく上野方面に向かう京成本線に向かったときに、是非とも訪れておくべき古本屋があります。

 

堀切菖蒲園青木書店

決して広くはない店舗にびっしりと詰められた、文脈と拘りのある棚。

知の回廊を逍遥する感じが堪らないお店です。

 

<買った本>

ジャン・デ・カール「狂王ルートヴィヒ」
幸田露伴「幻談・観画談 他三篇」

 

捕捉2:

青砥の一つ手前、京成高砂には、小野本書店という伝説のお店があったのですが、昨年来何度訪れても開いておらず、どうやら閉店してしまったようです。。

 

意外と個性的な古書店がそろった京成線、ぜひお越しください!

 

とにかく簡単な曲4選

www.music-apartment.red

 

こんな記事を見かけて楽しく拝読しました。

ラモーンズの「電撃バップ」はやはり鉄板だよなぁ、と思いましたが、他の曲はドシロウトにはそれなりにムズイのではと思い、手段を選ばなければ(※)もっと簡単なのあるよね、ということで考えてみました。

※「モテたいという欲求を満たせなくてもいい」という意味です。

 

ちなみに私はバンドマンだったことはなく、高校生の時分に田舎のミカン倉庫で適当にギターを鳴らして遊んでいた感じや、音源を聞いた感じで雑にチョイスしていますのでノークレームでお願いします。

 基準は

  • コードが少ない
  • ギターは基本パワーコードで、アルペジオや複雑なリフ、ギターソロなどがない
  • ベースも凝ったことしてない(というかいなくても大丈夫なレベル)
  • ドラムも8ビート以上の凝ったことはあまりしていない。

みたいな感じ?でしょうか。

Nirvana / molly's lips 

Molly's Lips
¥ 250

なにはさておきこの曲でしょう。カート・コベイン率いるナーヴァナ。

のちに「そっくりさんが森をウロウロしているだけ」みたいな映画も作られたカリスマです。

この曲はG→Cの2コードの繰り返しだけなのにキャッチー。 

もともとThe Vaselines のカヴァーなのですが、原曲はギターのアルペジオ的なのとか、もう少し凝ったことやってるのでこちらのバージョンがいいと思います。

 

Jane's Addiction - Jane Says

 みんな大好きジェーンズ・アディクション。オルタナにおける重要なバンドでしたね。

G→Aの2コードでイケます。

ギターが多少凝ったことをやっていますが、このお兄さんが懇切丁寧に教えてくれますし、「Janes Says~」だけ気持ちよく連呼できてればOKなので最悪無視してもいいのではないでしょうか。

www.youtube.com

 

 

The Velvet Underground - Real Good Time Together

We're Gonna Have a Real Good Time Together
¥ 250

ルー・リード率いるレペゼンNYな特殊バンドで、パンクの入門書にルーツとして記載されていて意味わかんないとなりがちなバンドNo.1です(DHC調べ)。

そののちアンディ・ウォーホル方面から接近したりして腑に落ちたあなたは既に手遅れ。

この曲は、コードは4つも必要なのですが、

・出だし "We're gonna have a real good time together"を{A}{B}{E}{E}のパターンで4回、

・サビの”Na-na-na-na-na, na-na-na-na-na, na-na ”を{A}{B}{D}{D}で4回、

と、極めて分かりやすいので大丈夫です。歌詞もこれでほぼすべてです。

バスドラムを平らに置いてポコポコ叩き、「これはアフリカンドラミングの影響を受けた奏法なのです」と言っておけばいい手軽さもあります。

 

コードで言えば「Sweet Jane」なんかもワンパターンで簡単ですが、やや歌がムズイかなと思います。

「what goes on」とかもCDGAのひたすら繰り返しでトランス感があっていいですね。

 

 

The Stalin - 天プラ

天プラ
THE STALIN
¥ 200

遠藤ミチロウ率いるジャパニーズ・パンクバンド。メディアを有効活用した知的なパンクとしてディスられつつも、豚の臓物の投げっぷりには定評があります。

この曲はちょっとテンポ速くて大変そうですが、歌詞は「天ぷら おまえだ からっぽ」のスリーワードしかなく、すぐに覚えられる利点があります。

コードチェンジとかも適当でいいのではないかと思います。

 

いかがでしたでしょうか。

上司や反社会勢力の人、宇宙人などに、来週までにバンドを組んで演奏できる状態にしないとポアするね、

と言われた際などにご活用いただければ幸いです。

 

昭和13年刊行の火野葦平「糞尿譚」が歯抜けだった話し

 Kindle Unlimitedで火野葦平の「糞尿譚」を読んだところ、文章が歯抜けになっていましたというお話し。

糞尿譚 [他四篇]

糞尿譚 [他四篇]

 

 「糞尿譚」は昭和12年の第6回芥川賞受賞作で、作者が日中戦争で従軍中であったために、小林秀雄が戦地に赴いて受賞の旨を伝達したという逸話があるそうです。

汲み取り事業に奮闘する男が、地元の政治の中でうまく立ち回れず不遇をかこつ、その鬱屈と憤りが、糞尿のパワーを持ってして幾分の可笑しさとともに噴出する、スカトロジア文学(おまけ参照)の傑作でした。

 

さて本書は受賞の翌年、昭和13年に小山書店から刊行されたもののようですが、読んでいると結構歯抜けになっている個所があります。

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82~83ページなどはこのように文脈で補えないレベルで抜けており、さすがに気になって青空文庫で補完する羽目になりました。

 

火野葦平 糞尿譚青空文庫

女のある家に赤い紙が落ちていたり、赤く染っていたりするのは当然のことですが、よく便所の中にサックててあるところがあります

 :

また汲取りに行くと、丁度、誰かが用便中で、空気抜きに下の方に硝子戸があったりするようなところで、戸があいて居って白い女の足が見えたり、と、酔いの廻った彦太郎がべらべら喋舌りつづけるのを、阿部がとって、わあ、これは聞き捨てならぬぞ、痴漢ちかん小森彦太郎便所を覗くの図か

別に特別に覗くわけではないのですが、偶然そういう場合に出合って眼に入るわけです、その時は夕暮れ近くなので薄暗かったのですが、しゃあという音がし、 じゃぼじゃぼとこぼれる音がどうも小便の音と違うので、不思議に思って見ると、ホースの先が見え、水道の水をどんどん出して、しきりにあそこを洗っている のです、私は、おどろきましたな。ぼんやりしていると、しばらく叮嚀に洗ってから

 赤字部分が歯抜けになっていた個所です。

現代の基準ではどうということもない記述に見えます。

おそらく戦前の政府による検閲で、削除処分というやつだと思われるのですが、受賞作の出版がこれでは作者も辛かったのではと思いました。

 

Amazon以外でも、こちらで無償で閲覧可能です。

国立国会図書館デジタルコレクション - 糞尿譚 : [他四篇]

※画像は下記のポリシーに従って、「インターネット公開(保護期間満了)」となっているため転載可能と判断して載せています。

サイトポリシー|国立国会図書館―National Diet Library

※幾分センシティブな話題な気もしますが私はメロスばりに政治の分からないノンポリゆるふわ本好きですのでノークレームでお願いします。

 

おまけ

 

ウィタ・フンニョアリス

ウィタ・フンニョアリス

 

 安岡章太郎の偉業。古今東西糞尿アンソロジー。

 

スカトロジア―糞尿譚 (福武文庫)

スカトロジア―糞尿譚 (福武文庫)

 

 ウンチク満載のクソリアリズムエッセイ。

【萌え】メリメ作品三大ヒロイン

みなさん、ファム・ファタールには出会えていらっしゃいますでしょうか。

サロメ最高、毛皮のヴィーナスがイイ、NICOが好き、マノンレスコーが…など人さまざまだとは思いますが、そういえばメリメの小説に登場するヒロインって魅力的だなぁと思ったので突如紹介させてください。

色んな萌えパラメータで評価しようと考えたのですが、フェミニンな人が怒ってきたらイヤなので、当たり障りのない「フィジカル」と「メンタル」に集約しました。

 

カルメン

大ブレイクしたビゼーの歌劇の原作です。

カルメンはジプシー娘で、とにかく気性が激しく情熱的。

でも機嫌の良いときに二人きりになると相当デレてくる。そこが魅力。

占いや踊りなど芸達者でもあります。

 

フィジカル★

メンタル★★★★★

 

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)

 

 

コロンバ

コルシカ娘、最強の妹です。

おフランスで都会の絵の具に染まってしまった兄貴が「復讐なんて田舎の蛮習さベイベー」とすっかりヘタレてしまったのを見て激おこ、「コルシカ人の血を忘れたとは言わせんけぇのぉ」と、父の仇らしき男を討つよう激詰めします。

 

フィジカル★★

メンタル★★★★

 

 

コロンバ (岩波文庫 赤 534-2)

コロンバ (岩波文庫 赤 534-2)

 

 

イールのヴィーナス

彫像です。フィジカル最強です。

披露宴を翌日に控えたイケメンが、テニス的な遊戯が盛り上がってきたので、邪魔になった婚約指輪を彼女の中指に嵌めてしまい、「え、うっそマジでワタシ選ばれちゃった!?」と勘違いさせてしまいます。

その後、イケメンに夜這い+だいしゅきホールドを仕掛ける大胆さを発揮します。

大変萌えます。イケメンは死にます。

 

フィジカル:★★★★★

メンタル:★★★

 

メリメ怪奇小説選 (岩波文庫 赤 534-4)

メリメ怪奇小説選 (岩波文庫 赤 534-4)

 

 

お題「読んだことのある芥川・直木賞作品」

お題「読んだことのある芥川・直木賞作品」

 

「コンビニ人間」がトリガーとなり、そういえば芥川賞受賞作ってどれぐらい読んだことあるのかな、とふと気になったので調べてみました。
受賞作そのものを読んだことがあるかどうかで、作家でいえばおそらく三倍ぐらいになるのでしょうが面倒なので調べていません。

 

58回(1967年下半期) 柏原兵三 徳山道助の帰郷
64回(1970年下半期) 古井由吉 杳子
70回(1973年下半期) 森敦 月山
74回(1975年下半期) 中上健次
75回(1976年上半期) 村上龍 限りなく透明に近いブルー
88回(1982年下半期) 唐十郎 佐川君からの手紙
103回(1990年上半期) 辻原登 村の名前
105回(1991年上半期) 辺見庸 自動起床装置
108回(1992年下半期) 多和田葉子 犬婿入り
110回(1993年下半期) 奥泉光 石の来歴
113回(1995年上半期) 保坂和志 この人の閾
114回(1995年下半期) 又吉栄喜 豚の報い
123回(2000年上半期) 町田康 きれぎれ
124回(2000年下半期) 堀江敏幸 熊の敷石
133回(2005年上半期) 中村文則 土の中の子供
134回(2005年下半期) 絲山秋子 沖で待つ
144回(2010年下半期) 朝吹真理子 きことわ
144回(2010年下半期) 西村賢太 苦役列車
155回(2016年上半期) 村田沙耶香 コンビニ人間

19冊でした。只管とりとめなく読書する人なのでまぁこんなもんかなと思いました。

 この中だとやはり中上健次の岬でしょうか。

岬 (文春文庫 な 4-1)

岬 (文春文庫 な 4-1)

 

 

ついでに直木賞も。

6回(1937年下半期) 井伏鱒二 ジョン萬次郎漂流記・その他
26回(1951年下半期) 久生十蘭 鈴木主水
32回(1954年下半期) 梅崎春生 ボロ家の春秋
46回(1961年下半期) 伊藤桂一 螢の河
81回(1979年上半期) 田中小実昌 浪曲師朝日丸の話・ミミのこと
119回(1998年上半期) 車谷長吉 赤目四十八瀧心中未遂
130回(2003年下半期) 京極夏彦 後巷説百物語

 

7冊。著者自身が怨念を込めて語っていた「赤目四十八瀧~」もそうですが、「蛍の河」なんかも芥川でいいのでは、と思いました。

 

割と自分の読書傾向がざっくり見える気がして意外と楽しかったです。

 

オンライン書店 Honya Club.com:芥川賞 過去の受賞作品一覧

一覧はこのサイトに掲載されていますので皆さんも眺めてみてはいかがでしょうか。

【書評というほどでもない感想】村田沙耶香「コンビニ人間」

話題の芥川賞受賞作、村田沙耶香「コンビニ人間」の、書評、というほどでもない感想+おまけです。

感想

コンビニ人間

コンビニ人間

 

詳しいあらすじはAmazonなどを見ていただければと思いますが、ひとことで言うと「36歳、コンビニバイト歴18年の”私”こと古倉恵子が、世界の”普通”と闘いながら、生き方を模索する」お話しです。

 

まず何よりも、リーダビリティが高く、一気に楽しめる点は特筆すべきでしょう。よくある芥川賞作品特有の小難しさや引っ掛かりみたいなものはほとんど感じられません。

その上で何を感じるか、共感や違和感、人それぞれあるかと思いますが、私は”ディストピアもののSFを読んでいるような怖さ”、をもっとも感じました。

 

物語の主軸になっている、主人公の古倉さんが世界との関わり方において抱える葛藤、みたいな部分は、共感できるとは言えないまでも、何となく分かる気がしました。

皆が何となく飲み込んでいて、屡々無意識に他人に押し付けたりもしている、社会における常識(所謂”普通”)的なものをうまく認識して処理できない古倉さんは、ある種、人工無能的なアプローチでそれに対処しています。

他者(主にコンビニのバイト仲間)を観察して、服装や話し方をリミックスして自分のものにする、皆が怒っているときは怒っているようにふるまう、など、期待される”普通の”反応を、ある程度まで自然に見えるレベルで実現できていて、寧ろ優等生と言えそうなぐらいです。

社会の中での振る舞い方、要するに社会性、は、生得的なものよりは、他者との関わりの中で学んでいくものが多いでしょうし、古倉さんの場合はかなりエクストリームに描かれているとはいえ、その身の処し方自体には、誰しも思い当たる節があるのではないでしょうか。

 

では私にとって、何がディストピア的に怖いと感じられたのか。

それは、詰まるところ、主人公がその歯車の一部となって充足を感じているのが「コンビニ」であることです。

消費社会の象徴的な終端であるコンビニで、自己の全てを実現してしまう、それってやはり人間性の根幹の部分で、少なくとも”今は”"まだ”ヤバいことなのでは、と思ってしまうのです。

「消費社会の中での完全な自己実現」を肯定することは、言い換えれば「文学の不在」そのものだとも言えそうな気がしていて、作者がどのように考えているのかが気になったりもしました。

或いは、私の根がロマンチストで甘ちゃんにできてるだけで、ニュージェネレーションの文学においてはそれこそ”普通”なのかもしれませんが。

 

おまけ

間取りの手帖remix (ちくま文庫)

間取りの手帖remix (ちくま文庫)

 

おもしろ間取りコレクション。めくるめく楽しい一冊です。

巻末に石丸元章のインタビューが掲載されており、あったらうれしい間取りとして、コンビニの周囲を部屋が取り囲んでいる=部屋を出るとコンビニに直結している ものが提案されています。

「コンビニは資本主義の末端神経」「深夜に一人でコンビニに行って立ち読みなどすると、孤独な安心感がある」などの発言もあり、「コンビニ人間」の世界観に通底する気分があるなぁと思いました。